tadashi's blog

私は在野の研究者です。日本語教師をしながら、日本語の「は」「が」の使い分けを解明する理論に至りました。それから、この理論を文法基礎理論として体系化し、また、それらを裏付ける哲学的かつ科学的に裏付けの研究に進みました。

「は」と「が」の交差対立理論の概要⑦ 有標化による含意効果分析と先行研究:久野暲「が」の中立叙述、尾上圭介「は」の二分結合説の再解釈

交差対立の有標・無標を、先行研究との一致と相違によって対比して説明する。 久野の「雨が降っている」を「中立叙述」とする理論的解釈がある。これは、AとBの対比のみに由来する。つまり、久野は、B「これがみかんだ」には、A「雨が降っている」にない…

「は」と「が」の交差対立理論の概要⑥ 有標化による含意効果の分析

「は」と「が」の交差対立有標化による含意効果の分析 <基底文を有標化する「は」と「が」:交差対立現象を可能にする二元性> 言語を運用する意識にとっては、「事態・直観文」と「定性関係・判断文」は、同一平面上の基底レベルにある。ところが、その文…

「は」と「が」の交差対立理論の概要⑤ 補足:知覚対象と語彙のネットワーク

補足:知覚対象と語彙のネットワーク 知覚対象の直観による特定は、個体、カテゴリー、事態であり、対応する日本語の抽象度の高い語彙との対応がある。 個体:固有名詞による「もの」:富士山(自然)、スカイツリー(社会文化 的実在)、東京(地名)など …

「は」と「が」の交差対立理論の概要④ (承前)事態と定性関係の二元論/認識様態の区別、「直観」と「判断」について

事態と定性関係の二元論 基底文がそなえる命題内容の意味パタンが、「事態」と「定性関係」のわずかふたつのプロトタイプに分けられるとする理由は、第一に、日本語がそうなっているからに相違ない。 「は」と「が」の使い分けの包括理論を求めて、この結論…

「は」と「が」の交差対立理論の概要③ 「事態」と「定性関係」の認識様態の相違点:ボトムアアップ対トップダウン

<「定性関係文」の図式→文トップダウン過程の優位性:「事態文」との比較> 定性関係に関する日常言語の認識様態は、判断と直観の二つがある。 定性関係の認識が直観による場合は、前述定的な一時的認識である感覚知覚による直観を土台にする。また、定性関…

「は」と「が」の交差対立理論の概要② 「定性関係」

定性関係という用語と概念について <「定性関係・判断文」の「定性関係」の意味> 次に、三尾により「判断文」とされた、形式的に、名詞述語文と形容詞述語文をとりあげる。文を「現象文」と「判断文」を二元的分類枠組みとする三尾砂の問題は、認知内容と…

「は」と「が」交差対立理論の概要① 「基底文モデル」「事態」

本書の結論:基礎理論の核心:「基底文モデル」理論の概要 「基底文モデル」 言語現象としての日本語の文の基底レベルの機能は、命題内容を構成する機能の最小単位が担っているという作業仮説を立てた。その最小単位は、あらゆる文の原基的形態でもある。 ま…

「は」と「が」の交差対立理論の核心を表現する表

「は」と「が」の交差対立理論の核心を表現する表 表1:「基底文モデル」の命題内容と認識様態と「は」「が」の関係図 認識様態 直観(が) 判断(は) 命題内容 事態 A事態・直観<無標> 「雨が降っている」 C事態・直観+判断<有標> 「雨は降っている…

予告

(次の更新は、次の週末の予定です。しばし、またれよ。質問、反論、大歓迎です。)

はじめに⑨ (10)<外国人の視点とチンパンジーの視点>

(10)<外国人の視点とチンパンジーの視点> この日本語の基礎の理論的解明が進むにしたがって、言語によるコミュニケーションをする人間の意識にとって、自然言語はどのように位置づけられるかについて、筆者の理解も深まった。この点についても概要を示す…

はじめに⑧ ⑼<題目—題述構造を、主題—題述構造としたうえで、文の本質とすることの問題点>

⑼<題目—題述構造を、主題—題述構造としたうえで、文の本質とすることの問題点> 題目—題述構造は、「は」の有無に関わらず、どのような文にも見てとれるものである。「は」の入る文にしか「題目」が認められない場合は、三上説が形成した偏見によって、現実…

はじめに⑦ ⑻<三上説の問題点>

⑻<三上説の問題点> しかし、基礎理論を提起する立場からは、あたかも原理のように無謬性を前提にされる「は」=主題表示本務説は、その理論の形成段階と適用段階の両方で、誤っていることを指摘しなければならない。 ・文分析方法の誤り:無題化、ピリオド…

はじめに⑥ ⑺<先行研究との相違点・継承する説:三尾砂説と提題の「は」理論の統合>

⑺<先行研究との相違点・継承する説:三尾砂説と提題の「は」理論の統合> 基礎理論の立場からすると、これまでの研究は、あまりに助詞の「は」=提題という、日本語の固有の側面に注目し、普遍的側面への関心が薄すぎることを先に指摘した。普遍的側面とは…

はじめに⑤ ⑹<基礎理論の体系性の利点>

⑹<基礎理論の体系性の利点> 文の二元性を原理として、理論に体系的関連性を備えさせることの利点には次のようなことがある。 ①[文の原基形態としての基底文] 基底文の理論により、あらゆる文の原基的形態となる形式と機能を確定で きること。これは、また…

はじめに④ ⑸<基底文の二元性原理の主格と述語について>

⑸<基底文の二元性原理の主格と述語について> 基礎理論の利点は、「は」と「が」の使い分けの理論的解決以外にもある。 それは、日本語文法理論の原理の提示である。 原理は、誰でも当然だと納得できる文に備わる事実である。すなわち、統語レベルの主格と…

はじめに③ ⑷<二重コピュラ言語としての日本語>

⑷<二重コピュラ言語としての日本語> ⑴「は」と「が」のふたつとも、主格と述語の直接結合を示す機能があり、かつ、 ⑵文の命題内容の異なる二つのタイプ(出来事命題と関係命題)に合致する一方で、さらに、 ⑶さらに認識論的、かつ、論理的機能を担い、交差…

はじめに②   ⑶<問題設定:主語+は?それとも、かつ、主題+は?>

はじめに② ⑶<問題設定:主語+は?それとも、かつ、主題+は?> ところで、日本語には、基礎理論(交差対立理論、文の二元性理論)のような理論を一筋縄では許さない文法現象がある。 主格以外の成分にもつく「は」の存在である。たとえば、「ファックスは…

日本語文法の基礎理論:「は」と「が」の使い分けの理論的解決と展開 (体系的アプローチの解説)

前の記事にあるような、「はしがき」から始める学術的に十分な内容を備える一書の完成を目指し、原稿を書き綴っております。 8割がた書き進んだ後、なかなか執筆作業がはかどっていません。 このテーマの研究をとうに終えて、わたしとしては、答えはもう出て…

『日本語文法の基礎理論:「は」と「が」の使い分け理論とその展開』(仮題)

(現在執筆中の『日本語文法の基礎理論:「は」と「が」の使い分け理論とその展開』(仮題)の原稿から抜粋しています。) はしがき① 本書は、日本語文の基本的な仕組みに関する理論書である。 基本的な文とは、形式的にも機能的にも文の最低限の要件を満た…